Tortoise Shell

Webサービスの会社で働くデザイナーが、デザインやライフハックについてゆるく書き連ねるブログです。

新機能リリース時のユーザーコミュニケーションについて

ここ半年くらい、Webサービスの新機能リリースに携わる機会が多かったのだが、ユーザーコミュニケーションの仕方に悩むことがあった。

というのも、新機能をリリースした後は、その機能がどのくらいのインパクトをもたらしたのか効果計測が行われる。

その際、機能によっては十分な利用の母数が集まらず、正しく評価ができない場合があった。

そんな時「もっと使われる努力をすることが必要」という話になる。一見するともっともな意見に思えるが、なかなか難しかったりする。

よく「一目で分かるUI」という言い方を耳にするが、これは幻想である。

というのも、機能追加の際は、その機能を使わせることを中心に考えるわけではない。

あくまでも、全体の中での位置付けを加味して、他の機能と合わせて再定義しているのだ。

例えば、新しい家電を買った時をイメージしてほしい。

最近わたしは、新しい冷蔵庫を買った。我が家は妻と二人暮らしなのだが、学生時代の一人用冷蔵庫をずっと使い続けていたので、いいかげんに大きな冷蔵庫を買うことにしたのだ。

しかし、一人用冷蔵庫の上に載せていた電子レンジをどうにかしなければならないので、結局はキッチン周りの家電の収納についてゼロベースで考え直すことになった。

電子レンジをここに置いたとして、炊飯器はここに置こう。いやでも、炊飯器から水蒸気が出るので、炊飯器を電子レンジの下に置くのは微妙だな。

こんな感じで、キッチンの持つそれぞれの機能(家電)について加味し、全体の中で位置付けを再定義しなければならないのだ。

このとき、新しい冷蔵庫のことだけを考えていたのでは、使いやすいキッチンのレイアウトにはならないだろう。

また「一目で分かるUI」は、いつかバッティングする。毎回、機能を追加するたびに「一目で分かるUIを」と言っていたら、結局全体としてはよく分からないUIになってしまう。

そもそも、常に「一目で分かるUI」が正義なのだとすると、例えばPhotoshopやその他のプロユースなツールは「ダメなUI」なのだろうか。

そうではないはずだ。正確には、優れたUIとは「一目で分かる」のではなく、「学習を促し定着させる」ものである。

そのためには、プロダクト全体での一貫性が大切になる。

操作の規則性が常に一貫していることによって、ユーザーの中に「こういうのは、だいたいこんな感じに使えば良い」というイメージを根付かせるのだ。

一貫性は、ユーザーの学習コストを大幅に下げることができる。

局所的なUIデザインを続けて一貫性を無視し続ければ、全体としては、ユーザーに毎回学習を要求する面倒なプロダクトになってしまう。

ゆえに、どういうUIにするかという話と、それをターゲットとなるユーザー層にどう伝えるか、はまた別の話なのだ。

それでは、ここまでを踏まえて、あらためてどういう伝え方をすべきなのか。

正直「これだ」という正解を、わたし自身はまだ持ち合わせていない。しかし、アンチパターンであればいくつか知っている。

例えば「モーダル地獄」のような現象だ。ユーザーは、いつもと同じようにプロダクトを利用し始めるのだが、そこに突然モーダルウィンドウで操作を遮断され、見たくもない訴求を見せられるのである。

最悪なのは、1つ目のモーダルを閉じたと思ったら、また別のモーダルが表示される場合があるのである。

これは、局所的な改善を続けて、全体のユーザー体験を統括する体制が整っていない開発組織でよく見られる現象だろう。

ちなみに、わたしはモーダルウィンドウという見せ方を悪く思っているわけではない。

モーダルウィンドウは、ユーザーの操作の文脈を遮断する分、本当にこの操作や情報に集中して欲しいという場合にうまく機能する。

どんなUIも、所詮は手段に過ぎず、悪いのはUIではなくその使い方を設計する人間の方にあるのだ。

とはいえ、モーダルウィンドウは既存のUIを気にせずに差し込めるという点で、使い勝手が良さそうに見えるのは理解できる。

では、他に何か選択肢はないのだろうか。もちろんある。

例えば、ポップアップを利用した訴求の方法はどうだろうか。ポップアップであれば、ユーザーの操作の文脈を遮らず、注意を促すことができる。

あるいは、Webやスマートフォンアプリであれば、あらかじめ「通知」を切り出して見られる場所を用意しておくのも良いだろう。

しかし、ポップアップも多用すれば結局は注意を分散させるし、通知にしても、訴求をどんどん送りつけていれば、重要なメッセージは埋もれてしまうことになる。

結局は、すべてバランスということになる。そのバランスをどう設計すれば良いのかがミソになるのだが、前述の通りわたしは正解を持てていない。

ただ、ヒントは世の中にころがっていて、例えば他社サービスを注意深く観察することはひとつの手段だろう。

モーダルウィンドウによる伝え方だと、最近「note」にログインしたときに、ちょうどモーダルウィンドウでお知らせを受け取ったが、嫌な感じはしなかった。

通知による伝え方だと、Progateの通知(ベルマークのアイコン)は、普段余計な宣伝などが入ることがないので、新しいレッスンが追加されて見逃すことはない。

ここから得られる教訓としては、表面的なUIだけ真似したところで、結局は自分たちが扱っているサービスの文脈の中で考えなければ意味がないということだろう。

ユーザーコミュニケーション、とても深い。引き続き、考えていきたい。伝え方のデザインだ。