Tortoise Shell

Webサービスの会社で働くデザイナーが、デザインやライフハックについてゆるく書き連ねるブログです。

U理論とUIデザイン。あるいは、ユーザー体験のための組織デザインについて

最近、U理論という本を、少しずつ読み進めています。

この本は、元々は組織論やリーダーシップ、自己変革といった文脈で語られることの多い名著です。

しかし、事業会社でデザイナーとして働くわたしとしては、デザインの文脈でも非常に学びのある内容だと思いました。

例えば、プロダクトの中で優れたユーザー体験を実現するためには、結局は組織のデザインに行き着くということです。

U理論[第二版]――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

U理論[第二版]――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

  • 作者: C・オットー・シャーマー,中土井僚,由佐美加子
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2017/12/20
  • メディア: 単行本
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U理論とは

検索すれば、言葉の定義は見つかると思いますので、わたしなりの解釈で説明したいと思います。

U理論とは、物事の表面だけに囚われず、深い内省を通して「来るべき未来から学ぶ」ためのプロセスです。

U理論は7つのステップに分かれており、

  1. ダウンローディング
  2. 観る
  3. 感じ取る
  4. プレゼンシング
  5. 結晶化
  6. プロトタイピング
  7. パフォーミング

という順番から実践されます。

これらの変遷が、アルファベットの「U」の形を辿ることから、U理論と名付けられているのです。

わたしたちは、いつも「ダウンローディング(過去のパターンにならう)」という表面的なレベルで物事に対処しがちです。

しかし、本当に重要なのは、ダウンローディングを超えて、深く内省すること。

そして、来るべき未来から学び、本当に取り組むべきことを見出すという行為なのです。

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デザイナーの盲点

U理論の枠組みに当てはめてみると、わたし自身も、プロダクトのUIデザインを行う中で気づいたことがあります。

結局のところ、優れたユーザー体験を実現したいのに、物事の表面にばかりに囚われていたということです。

例えば、スタートアップのプロダクトであれば、軌道に乗るまではデザインの細かいディティールにまで気を配れないこともあるでしょう。

最近になってCDOという役職も出てきましたが、スタートアップの経営レイヤーに、初めからデザイナーがいるパターンは多くありません。

その状態で走り続けた結果、不要なバナーや、トーンに合わないデザインが放置されていることがあります。

デザイン面でもそうですが、システム面でも、いわゆる「負債」としてよく言われることです。

それらの問題を、頑張って1つ1つ解決しようとするのですが、所詮は対処療法に過ぎません。

結局は、そうした状態を放置してしまうことや、長期的な改善にリソースを投下できない組織構造に問題があるのです。

つまり、組織のデザインをしない限り、根本的には何も解決しないということになります。

がん細胞と治療方法

こうしたデザインの負債、コードの負債の広がりは、ガンにも似ていると思います。

1つ1つの負債をガンだとすると、ガン細胞はどんどん広がっていくのですが、ガンは短期的な治療で解決するものではありません。

例えば、ものすごく優秀なデザイナーを社外から招き入れて、一度フルリニューアルを行なったとします。

一見すると、これでプロダクトが全て綺麗になって、一件落着に思えるかもしれません。

しかし、プロダクトが生き物である以上、フルリニューアルを終えた状態のまま放置されることはあり得ません。

前述したような、組織の構造的な問題や価値観を変えない限りは、また同じことが起きるでしょう。

しばらくすると、また不要なバナーが大量に貼られ、ユーザーの行動を阻害するような訴求が溢れてきます。

かつては美しく保たれていたデザインも、あっという間に崩壊してしまうのです。

これは、抗がん剤治療で一時的には症状を抑えることができても、100%根本から完治するとは限らないこととに似ています。

表面ではなく内面に目を向ける

U理論から得られる一番の示唆は、表面ではなく内面に目を向ける重要性です。

ただ目の前で起きることに反応するのではなく、深い内省から未来を見通し、取るべき行動を選択する必要があるのだと思いました。

わたしたちは、常に周りの状況に踊らされ、つい反応してしまいます。

そして、表面的なことに頑張って取り組んで、それで成果が出ると思い込んでしまいます。

もちろんデザイナーの場合でも、同じことが言えます。

海外のイケてるスタートアップや、流行のデザインを積極的に取り入れ、これこそが最高のUXだ!と信じ込むのです。

彼らに追いつくことで、自社のプロダクトが良くなるのだと考えてしまうのです。

しかし、本当に見なければならないのは、自分自身ということになります。

良いデザインを作ろうとするのではなく、そもそもデザインすべき対象は、どこでどうやって決められているのか。

構造的に、そこで全てのデザインに関する価値も規定されてしまうのです。

その枠組みから見直さない限りは、現状から大きく変えることもできないのでしょう。

おわりに

U理論は600ページ近くもある本で、なかなか読み終えるのは大変です。

しかし、内容としては、U理論の枠組みと実践例がひたすら詳しく解説されています。

ネットで解説を読むだけでは、ただのフレームワークとして表面的にしか消化できないので、ぜひとも原典をしっかりと見ることをおすすめします。

今回お話した、U理論とUIデザインについて。あるいは組織のデザインについて、わたし自身は、つまるところ「じゃあ、どうすればいいの?」という答えは導き出せてはいません。

しかし、まずは考え方を変えて、そこから本当に取り組むべきことを導き出すヒントは得られると思います。

ぜひ、デザイナーやエンジニアの方でも、U理論を読んでみてください。

U理論[第二版]――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

U理論[第二版]――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

  • 作者: C・オットー・シャーマー,中土井僚,由佐美加子
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  • 発売日: 2017/12/20
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