先日「THE GUILD勉強会 ユーザーインタビュー設計」に行ってきました。
ユーザーインタビューについては、わたしの働いている会社でも、1年前から本格的に導入し始めていたところでした。
わたし自身も、インタビュアーとして実際にユーザーの声を聞く機会を何度か得ることができました。
しかしながら、他社で実際にどうやっているのかを聞く機会はほとんどなく、気になったので今回のイベントに応募した次第です。
今回は、上記のイベントに参加した中で、わたしが個人的に気になったポイントについて書き残しておこうと思います。
報酬をお渡しするタイミングのベストはいつ?
後半のトークセッションで「被験者から率直な意見を引き出すにはどうすればいいか」という話題になりました。
その中で「報酬を最初にお渡しする」というお答えがあり、示唆が得られました。
というのも、報酬をお渡しするタイミングが最後になっていると「ご褒美が保留されている状態」になります。
そのため、ある程度ブレーキがかかってしまい「あまり悪いことは言わないでおこう」という心理が働く可能性があるからです。
わたしの会社では、報酬をお渡しするタイミングはいつも最後でしたが、このテクニックについてはさっそく実行できそうです。
返報性の原理とのバランスについて
しかしながら、率直な意見を引き出すという意味では、正直どっちもどっちなのでは?と聞いていて思いました。
というのも、報酬を先にお渡しすると「返報性の原理」が働いてしまい、やはり「あまり悪いことは言わないでおこう」という心理が働くのではないかと思ったからです。
返報性の原理とは、他人から親切な行いを受けると、お返ししなければという心理が働くことです。
この働きの強さについては、『影響力の武器』の中でも詳しく紹介されています。
それは、たとえ快く思っていない相手からの施しに対してでも、お返ししなければという心理が働くほどです。
よって、報酬を先にお渡ししたらかといって、率直な意見を引き出すことにつながるのかどうかは、実際に試してみないと分からなさそうです。
というわけで、この「報酬をお渡しするタイミング、いつがいいのか問題」は、なかなか深いなと思いました。笑
一緒にサービスの悪口を言って盛り上がる
もう1つ「被験者から率直な意見を引き出すにはどうすればいいか」という文脈で印象に残ったのは「一緒にサービスの悪口を言って盛り上がる」というものです。
ただ「悪口を言って盛り上がる」というと語弊があるかもしれませんが、要するに被験者の方が話しやすい状況を作ることがポイントです。
例えば、開発したアプリについてインタビューするとき、「わたしが開発者です。よろしくお願いします。」と言って自己紹介したらどうなるでしょう?
被験者の方は、正直なことが言いづらくなりますよね。
使っているサービスに不満があったとしても、それを作った本人に向かって直接言うのは心理的なかなりハードルが上がります。
悪口は人のつながりを強固にする
そこで「わたしは開発担当の者ではないので、何でも言っていただいて構いませんよ」とあらかじめ言っておきます。
または、被験者の方から不満の声を聞いたとき「分かります。わたしも正直に言って、その機能については使いづらいと思っていたんですよ。」と同調するのです。
このようにしておけば、被験者の方は率直な意見を言うハードルを下げることができます。
このテクニックについては、わたしの働いている会社でもすでに実践していましたが、あらためて聞くと自分の知識の整理になって良かったです。
これもよく言われることですが、悪口は人のつながりを強固にします。
悪口を言うことで「共通の敵 vs わたしたち」という構図を作り出すことができ、より信頼感が高まるのです。
おわりに
今回のイベントは、かなり倍率が高かったので、当選できてラッキーでした。
聞いていて思ったのは、ごく一部のテクニカルなものを除けば、良い意味で新しい発見は得られなかったということです。
というのも、わたしの働いている会社で実践しているインタビューの方法が、大きく間違っていたらどうしようかと思っていたからです。笑
実際はそんなこともなく、1年間の中で社内に積み上げてきた方法は、それなりに的を外してはいなかったと確認できて良かったです。
最後に、もしユーザーインタビューをこれから始めるという方がいらっしゃれば、まずは下記の本がおすすめです。

ユーザビリティエンジニアリング(第2版)―ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法―
- 作者: 樽本徹也
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ユーザーインタビューをはじめよう ―UXリサーチのための、「聞くこと」入門
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ユーザーインタビューの概要から、具体的な手法について詳しく解説されています。
特に「ユーザビリティエンジニアリング」の方は、必要な道具から当日のオペレーションまで。
さらに具体的な報酬の金額まで参考として掲載されており、至れり尽くせりな本になっています。