建築とWebデザインという組み合わせが興味深い記事だった。
Webデザインがたどってきたトレンドは、建築がたどってきたそれと同じである、という内容だった。
この記事を読んで、デザイナーが歴史を学ぶ意義のようなものを改めて感じた。
歴史を知るメリットは、その分野の未来が予測できるようになること、だと思っている。過去を知ることで、現在と繋げて、世の中がどのベクトルに向かっているのか分かるからだ。
未来が予測できれば、それに合わせたのキャリア構築など、生き残るための対策を練りやすい。
ところで、わたしの身近なところで歴史を感じるものとして、フラットデザインがある。
すっかりWebデザインのスタンダードになりつつあるが、広まった理由をきちんと言える人は多くない。
エンドユーザーから見れば、ただの一過性の流行に見えるかもしれない。ちょうど、ファッションの流行と同じように。
しかし、コンピュータがこれまでたどってきた歴史を知っていれば、異なる見方もできる。
例えば、GUIという概念がある。今では当たり前すぎて、GUIという言葉を認識する機会は少ない。
GUIとは、グラフィカル・ユーザー・インタフェースのことで、ユーザーがコンピュータに出す指示を視覚的に捉えて実行できる捜査手法のことだ。
元々、コンピュータを操作するためには、プログラム(文字列)をいちいち打ち込まなければならなかった。コンピュータの知識がない一般人は、理解することも難しい代物だった。
GUIでは、アイコン等を用いて視覚的に操作を行う。アイコンとは、ずばりメタファー(たとえ)である。
GUIによって、なぜコンピュータを一般人にも身近にできたのか。それは、コンピューター上の概念を、日常生活での動作に置き換えられたからだ。
いらないデータを消したいとき。GUI以前は、都度プログラムを打ち込んで削除していた。
今では、いらないデータを掴んで(ドラッグ)、ゴミ箱まで持って行く(ドロップ)だけでよい。現実の行動を、コンピュータに投影する感覚で操作できる。
しかし、そんなGUIも、時代の変化と共に限界を迎えることになった。コンピュータを誰もが使うようになると、別の問題が発生する。
例えば「保存」のメタファーとして現用いられる、フロッピーディスクのアイコン。今時の若者は、フロッピーディスクの存在すら知らない。
誰もがコンピュータを使いこなす時代では、現実のように美しく描画されたボタンやアイコンは、必ずしも必要ではなくなった。
Webサイトを閲覧するデバイスも多様化し、それらに対応してコンテンツを快適に見られることが重要視されるようになった。
よって、コンテンツを分かりやすく見せられ、かつCSSで画像を使わなくても描画できるフラットデザインは理に叶っている。
こうした解釈はあくまでも1つの見方に過ぎないが、歴史を知る事で、不用意に新しいものに囚われる危険性は回避できる。
歴史を学び、現在求められている本質を見抜く力を身につければ、デザイナーとしてより長く生き残れるのではないだろうか。