山口周さんの『知的戦闘力を高める 独学の技法』を読みました。
山口周さんと言えば、今でこそ経営コンサルタントとして数多くの著書を発表されています。
しかし、大学時代は美術史を専攻されており、広告代理店を経てから外資系コンサルに転職されたという異色の経歴の持ち主です。
この際、海外の大学でMBAを取得したわけではなく、完全に独学で経営学を学んでから外資系コンサルへ転職されています。
そんな山口周さんだからこそ、この本の中で述べられている「独学の技法」については、ぜひ知っておく価値があるのではないでしょうか。
- キャリアアップに独学が欠かせない時代
- 独学の技法を構成する4つのモジュール
- 何を読むかではなく、何を読まないか
- 独学の方針は、ジャンルではなくテーマで決める
- 「自分の持っているもの」を組み合わせて強みにする
- おわりに
キャリアアップに独学が欠かせない時代
わたしはWeb系の事業会社でデザイナーとして働いていますが、今の時代、キャリアアップのために独学は欠かせなくなったと感じています。
Web業界では日々新しいツールや技術がどんどん登場していますし、キャッチアップが遅れると、どんどん時代遅れのデザイナーになってしまうからです。
また、デザイナーの役割そのものも以前より成熟してきているように感じており、ただ「作るだけ」という風ではなくなってきました。
そもそも「何を作るか」というところから、エンジニアやマーケターなど、様々な職種のメンバーと協働することになります。
そのためには、表現としてのデザイン手法だけでなく、技術やマーケティング、経営など、多岐にわたる知識を身につけなければならなくなりました。
そんな中で、独学の技法を知っているのと知らないのとでは、将来大きな差が付くのではないかと考えています。
独学の技法を構成する4つのモジュール
前置きが長くなりましたが、本編の中で印象に残った部分をお話したいと思います。
まず本の中では、独学の技法が、次の4つのモジュールに分割して説明されています。
- 戦略
- インプット
- 抽象化・構造化
- ストック
ちなみに、これら4つのモジュールについての説明で興味深かったのが、世の中で発表されている独学の技法のうち、多くが「インプット」の話ばかりをしているということです。
例えば、読書法であったり、情報収集の習慣化であったりと、独学のステップのうち「インプット」にばかりフォーカスされているのです。
しかし山口さんは、この情報過多の時代に必要なのは「何を読む(インプットする)のかではなく、何を読まないか」を決めることだと言います。
つまり、独学の上では、まず「戦略」を決めることが重要になるのです。
何を読むかではなく、何を読まないか
何を読むかではなく、何を読まないか。その取捨選択を行う作業は、意外と難しいものです。
わたし自身、普段生活していると「あれも勉強しなきゃ」「これも勉強しなきゃ」と、焦ってしまうことがよくあります。
ですが、今回『知的戦闘力を高める 独学の技法』の中で、はっとさせられたフレーズがありました。
それは、「何の方針もなく読むのは、戦力の逐次投入と同じ。」ということです。
例えば、Web業界でデザイナーをしていると、前述したように、日々新しいツールや技術が更新されていきます。
新しいデザインツールを試さなければ。でも、コーディングの勉強もしないと。あ、この前買ったWebマーケティングの本をまだ読み終わっていない…。
このように、独学の上で戦略を決めておかなければ、結局は何も身につかず、全てが中途半端に終わってしまうのです。
独学の方針は、ジャンルではなくテーマで決める
また、わたしが今回もっとも重要だと感じたのは、独学の方針は「ジャンルではなくテーマで決める」と述べられていた箇所でした。
「ジャンルではなくテーマで決める」というのは、どういう意味なのでしょうか?
例えば、ジャンルで決める場合「グラフィックデザイン」「HTML / CSS」「SEO」という風に、いわゆる本棚に並んでいるような分類で選ぶというものです。
しかし、これでは各分野についてバラバラに学ぶことになるので、知識を統合させて相乗効果を発揮しづらくなるのです。
これをテーマに基づいて決めると、「自分のポートフォリオサイトを作れるようになる」「ゲームの口コミ投稿サイトを作る」という風になりますよね。
そうすることで、ゲームの口コミ投稿サイトを作るには、まず「HTML / CSS」を学んで、画像を作るために「Photoshop」を学んで…というように、ジャンルを跨いで統合的に学習できるようになるのです。
また、明確な目的がある分、独学する際のモチベーションが高い状態で取り組めるようになります。
「自分の持っているもの」を組み合わせて強みにする
何を学んでいくのかを考える上では、自分をプロデュースする視点も重要になります。
山口周さんによると、1つではなく、2つのジャンルを掛け合わせて自分を高めていくことがおすすめなのだそうです。
これには、わたし自身、とても納得するところがありました。
特定の1つの分野だけで勝負しようとすると、どの分野においてもトップクラスを目指すことは至難の技かもしれません。
しかし、自分の持っているものを組み合わせて、2つのジャンルが交わる部分でトップクラスを目指すことはできます。
わたしの場合であれば、1つ目のジャンルとして「デザイン」を置くのであれば、2つ目は何になるのでしょうか。
例えば、このブログを通して得られた「文章を書く能力」も、1つの立派なスキルだと思います。
誰しも、何か「自分の持っているもの」という強みを見つけることで、自分をプロデュースしていけるのではないでしょうか。
おわりに
今回は『独学の技法』の中でも、「戦略」にフォーカスして印象に残った部分を書きました。
やはり、小手先のテクニックの前に、今の時代は「そもそも何を読んで、何を読まないか」という取捨選択が重要になるのではないかと思います。
『知的戦闘力を高める 独学の技法』は、これ一冊だけでも役に立ちますが、今回あまり述べなかった「インプット」「抽象化・構造化」「ストック」といった3つのモジュールについては、『外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術』の中でより詳細に解説されています。
こちらの方は、よりメソッドにフォーカスして詳しく解説されていますので、具体的な読書術等を知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。