半年ほど前に、デザイナーのための「議論」入門という記事を書きました。
この記事を書いたきっかけは、当時わたしが抱いていた問題の解決方法を整理するためでした。
というのも、当時デザイナーとして、エンジニアやマーケターなど他職種のメンバーとうまく議論を交わすことができず課題感を持っていたのです。
そんな中「議論のレッスン」という本を読んだことで、議論の枠組みについて学ぶことができ、自分の中で議論の仕方に対するモヤモヤを晴らすことができました。
そして今回、上記の本と同時に買っておいたものの、ずっと積読になっていた「反論の技術 その意義と訓練方法」をいまさら読み終わりました。
こちらの本も非常に素晴らしい本でしたので、感想を残しておきたいと思います。
わたしたちが反論の技術を学ぶべき理由
はじめに、この本は反論の技術を学ぶための本です。
そもそも、わたしたちは、なぜ反論の技術について学ばなければならないのでしょうか?
それは「反論こそが議論の本質である」からなのです。
突然ですが、あなたは反論という言葉を聞いたとき、どんな印象を持ったでしょうか。
わたしは、これまで何となくネガティブな印象を持っていました。反論というと、相手に反抗したり、論破したりして、穏やかではないように思えたからです。
しかし、この本を読んでその認識が変わりました。
というのも、わたしたちが行っている主張というのは、実はそれだけである種の反論になっています。
なぜなら、その場にいる全員が自分の意見に賛成しているのであれば、わざわざそれを主張する必要性など初めから無いからです。
本の中で上記の考え方について知ったとき、わたしの持っていた「反論」に対する印象はガラッと変わりました。
よって、反論の技術について学ぶことは、議論について最も本質的なことを学ぶこととイコールなのです。
論理的であるとはどういうことか
わたしたちは、議論を行う際に、よく「論理的」という表現を使うと思います。
会社でも、上司や先輩が「もっと論理的に話してみて」と新入社員にアドバイスしている光景を見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
そもそも、論理的であるとはどういうことなのでしょうか。この本の中で、面白い定義が引用されていました。
「論理的」とは、「異なる立場の論者による批判に対し防衛力がある(すきが無い)」ということである。
この言葉を聞いたときは、思わずはっとしました。
当たり前かもしれませんが、例えば会社の中で議論をしていても「絶対的に正しい意見」など、そうそう出てくるものではありません。
大抵の結論は、様々な反論をぶつけていき、他者のあらゆる反論から防衛しきったときにはじめて「(おそらく)最も正しい意見」として成立するのです。
このことからも、反論の技術を磨くことが、仕事の中でも役立つことが分かります。
反論の技術を学ぶための訓練方法とは?
では、反論の技術を学ぶために、具体的にどのような方法を試せばよいのでしょうか。
この本の中で、取り組みやすい訓練方法として紹介されていたのが、まず「反論を事例を収集してカタログ化すること」でした。
例えば、新聞の寄稿でも、本の内容でも、ある主張に対して反論しているところを見つけます。
その中でも「面白いな」と感じた部分を抜き出しておいて、まとめておくのです。
本の中ではノートブックやカタログといった表現が使われていましたが、今であればEvernote等にどんどんストックしていくと良さそうです。
また、「日常生活の中で『これはおかしい』と思ったことに対して、頭の中で反論してみる」という方法も紹介されていました。
反論のカタログを作ったとしても、それを応用できなければ意味がありません。
そのために、頭のなかで登場人物を2人つくり、お互いに反論を繰り返させることによって、反論の技術を磨くことができるのです。
ところで、この訓練方法はデザイナーにとっても有意義ではないでしょうか。
というのも、デザイナーは常に複数のアイデアを展開しながら、どれが最も適切かを判断するプロセスを繰り返しています。
そんなときに、反論の訓練を積んでいれば、それぞれのアイデアの強みや弱みを把握しながら、精度の高い提案ができるようになるはずです。
反論の技術は、知的生産を行うすべての職種の人に役立つスキルとも言えます。
おわりに
今回「反論の技術」について紹介させていただきましたが、実はこの本のあとがきには、元も子もないようなことが書かれています。
それは「ここに書いてあることを学んでも、現実の議論で勝てるようになるとは限らない」ということです。
というのも、この本の中で扱っているのは、いわゆる「ルールのある格闘技」のような議論です。
しかし、実際の議論はそこまでうまくいきません。
ルールやマナーを無視した主張をしてくる人や、たくみなレトリックを用いて反論をさばく賢い人も大勢いるのです。
議論に強くなるためには、こうした現実を直視しつつ、場外乱闘でも勝てるようなテクニックを身に着けなければなりません。
そのあたりについては、この本では詳しく述べられていませんでした。(あとがきに書いてあったくらいですから)
よって、今後は「レトリック」などを扱った本を読んでみることで、そのあたりについてもう少し突っ込んで学んでみたいと思います。
もし今回の記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひ「反論の技術」をチェックしてみてください。