融けるデザインを読んだ。自己帰属感というテーマを切り口にして、UIやUX、IoT(モノのインターネット)の本質について書かれている。
既存のUI・UX関連の書籍が、いわゆる見た目(スタイリング)など表面的な内容にとどまる中、「融けるデザイン」では、
そもそもインタフェースってソフトウェアの話だけじゃないよね?
表面的なスタイリングを真似しても良いUIにはならない
iPhoneはなぜ操作していて気持ちいいのか
IoTってつまりどういうことなの?
など、日頃から疑問に感じていた事を言語化してくれており、読んでいて気持ちが良かった。
特に、第3章「情報の身体化─透明性から自己帰属感へ」の中の、「手とカーソル」についての記述は感動した。
これまで、優れたUIについて、表面的な理解しかしていなかったと思い知らされた。
簡単に言えば、わたしたちが手をインターフェースとして道具を使おうとするとき、手の存在は意識から消えている。
しかし、インターフェースである手は、道具を使おうとする際に適切な形に変化する。
ボールを掴もうとするときは指で包み込むような手になり、ラケットを持とうとするときは握る形になる。優れたUIとは、この感覚に近いというものだ。
思い返してみると、iPhoneの画面を操作しているとき、ナビゲーションやアニメーションを意識することはない。
現実にある道具を触っているように操作できるので、自然すぎてUIを意識することすらない。
逆に、わたしたちが「悪いUI」と意識するのは、自然に操作できないシーンに出会ったとき初めて気がつくのだ。
なぜなら、道具を自然に使えている限り、道具そのものについてわたしたちは意識しないからである。
ちょうど、切れ味が悪いことに気づいて初めてハサミの刃に意識を向けたり、肉がへばりついて初めてフライパンに意識を向けるように。
わたしたちは、常に道具によってもたらされる「結果」に注意を向けているのだ。
このことに改めて気が付き、「自己帰属感」というキーワードを手に入れることができれば、収穫はかなり大きい。
ジャンルを問わず、デザイナーならば必読の一冊だと言える。