アフォーダンスとは、ヒューマンインタフェースの権威であるD・A・ノーマンが、「誰のためのデザイン」で提唱した概念だ。
ざっくりと言えば、「ユーザに適切な行動を促す視覚的な手がかり」という意味で使われてきました。

誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論
- 作者: D.A.ノーマン,岡本明,安村通晃,伊賀聡一郎,野島久雄
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2015/04/23
- メディア: 単行本
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例えば、お風呂に入るときを思い返してみよう。
わたしたちは当たり前のように「暖かいお湯」と「冷たい水」をそれぞれ使い分けている。それは、ハンドルに色が付いているで知覚できるからだ。
もし、ハンドルに色がついていなければどうなるのだろうか。
風呂のハンドルくらいなら、長年の習慣から無意識に選んでお湯を出せるかもしれない。しかし、少しの間は混乱してしまうだろう。
ちょっとした事が足りないだけで、わたしたちの生活は不便になってしまう。
風呂のハンドルについている色は、まさしく「ユーザに適切な行動を促す知覚可能な手がかり」と言える。
こうした概念がアフォーダンスと呼ばれ広まったが、実は間違っていたと、下記の書籍の中でD・A・ノーマンが訂正している。

- 作者: ドナルド・ノーマン,伊賀聡一郎,岡本明,安村通晃
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2011/07/28
- メディア: 単行本
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ノーマンは、アフォーダンスのかわりに、シグニファイアを提唱した。
近年では、この「シグニファイア」という言葉が、これまでアフォーダンスと呼ばれてきた概念を表す用語になったのだ。
では、アフォーダンスとは結局どういう意味なのか。
結論から言えば、環境が動物に与える意味、または価値を指す。あらゆるものはアフォーダンスを持ち、動物は環境からアフォーダンスを参照し、知覚する。
例えば、ハリネズミは、見るからに触ると痛そうな外見をしている。これがアフォーダンスだ。
しかし、必ず知覚可能である必要はなく、あくまでも個人の知覚システムに依存する。
ある人は、ハリネズミの外見から「痛そう」というアフォーダンスを受け取るかもしれないが、ある人は何も感じないかもしれない。
一方で、シグニファイアは、人に適切なアクションを促すための手がかりのことだ。
風呂場の蛇口がそうであり、ドアの形状、換気扇のボタン、冷蔵庫の取っ手など、身近にはシグニファイアで溢れている。
しかし、今度はアフォーダンスと異なり、意図的に知覚されなければならない。
アフォーダンスは、シグニファイアをより抽象化した概念とも言えるし、シグニファイアを内包した広い意味合いがあるという見方もできる。
P.S.
改定された「誰のためのデザイン」では、アフォーダンスに関する記述が修正されている。
これらの意味について理解を得たい場合は、ぜひ一読をおすすめする。

誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論
- 作者: D.A.ノーマン,岡本明,安村通晃,伊賀聡一郎,野島久雄
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2015/04/23
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