随分前のことだが、クックパッドの宇野さんが、事業会社のデザイナーのポートフォリオについて述べられていた。
事業会社若手の「ポートフォリオに載せるものがない」現象をマジメに解決したい。
— Yu Uno / Cookpad Inc. (@saladdays) 2020年7月12日
事業会社のデザイナーはわかりやすい実績を得る機会が少ない。大きいプロダクトであるほど見た目でわかるものがない。でも世の中への課題解決度合いは大きく他で得られない経験ができてる。うまく可視化してあげたい。
ツイートに共感すると共に、わたしなりに以前から考えていたことがあったので、いつかブログに書こうと思ってそのままになっていた。
事業会社のデザイナーとして、ポートフォリオを作りづらいと感じていたのは、わたしもそうであった。
載せるものがないというのは大げさだが、分かりやすくビジュアルでぶん殴る、みたいなアプローチは取りづらいように思える。
受託制作であれば、様々な案件に関わることができるので、ポートフォリオにもたくさんの作品を載せることができる。
一方で、事業会社の中でデザイナーとして働いていると、だいたいの場合はひとつのプロダクトにずっと集中している。
例外があるとすれば、0→1で新規プロダクトをやるときくらいだろう。
また創業期からいるデザイナーでもなければ、既存のトンマナを踏襲してデザインすることになるので、アウトプットも地味になりやすい。
ポートフォリオという言葉は、投資の文脈では「銘柄の組み合わせ」といった意味合いを持つ。
その意味では、事業会社のデザイナーは、1つのカゴに卵を持るという投資のアンチパターンを踏んでいると言えなくもない。
もし大学や専門学校でデザインを学んで、新卒で入った会社が事業会社だった場合、初めての転職活動では混乱するだろう。
わたしもそうであったが、学生時代に作るポートフォリオは、様々な課題や自主制作を組み合わせて作るものだと指導される。
しかし、事業会社に入って施策単位でデザインしていると、関わるプロダクトとしては1つか2つしかないし、同じようなトンマナのデザインばかりになってしまう。
そのため、そもそもポートフォリオの見せ方を変えなければならない。
これまでやってきたような、ビジュアルでぶん殴るやり方が取れないのであれば、次のような内容を入れると良いだろう。
そのデザインによって、何を解決しようとしたのか。どんなアプローチを取ったのか。答えに至るまでの中間成果物。なぜ最終的にその案にしたのか。定性面、定量面での効果はどうだったのか。
このあたりまで書けると、とてもグッドだ。
このように、考えようによっては載せるものが無いわけではないのだが、やはりビジュアルでぶん殴れないのは単純に寂しい。
例えば、わたしが直近の転職用に作っていたポートフォリオも、特定のプロダクトの色ばかりになってしまって、なんというか賑やかさに欠けていた。
もちろん、案件ごとに様々な背景があり性質も異なるのだが、はたから見れば同じように見えてしまう。
なんだかんだで、ビジュアルでぶん殴るのが一番分かりやすいし、理屈でどうこう言っている人がいても、無意識下ではビジュアルに左右される。
ではどうすれば良いのかというと、例えばコンセプトアートを勝手に作るのは、ひとつの手だ。
あるいは、副業やプライベートワークを混ぜるのも有効だろう。
わたしの場合は、趣味で作っていたゲームや、プライベートのプロジェクトを入れることで、何とか賑やかさを取り戻すことができた。
思い返せば、もう少し副業はやっても良かったかもしれない。
ただし、もしプレイヤーとしてまだ一人前でないのであれば、本業で安定してパフォーマスを出せるようになるまでは控えた方が良いだろう。
体力に自信があるなら良いかもしれないが、単純に負荷が高くて大変だと思う。