ここ数年前から、Webサービス界隈でも、ブランドや世界観といった言葉をよく聞くようになった。
少なくとも、わたしの周りでは、ということでしかないので、狭い観測範囲の中でそう感じているだけかもしれない。
しかし、ブランドや世界観が関心ごとになってきたのは、一定理に適っている気がする。
思えば、5年くらい前までは、使い勝手が注目されていた。
スマートフォンが一気に普及し、それに伴い、直感的な操作で使いやすいことが重視されるようになった。
段々と「良いUI」のベストプラクティスは集約されていき、プラットフォームによる標準化が進んでいった。
特にスマートフォンアプリの方では、ガイドラインに従うことで、一定の使い勝手は簡単に担保できるようになった。
基本は「iOS Human Interface Guideline」や「Material Design」に従い、あとは自社アプリの文脈に沿って、個別事象をどう捌くかの問題でしかなくなった。
ユーザー目線では、学習コストが下がるため、ソフトウェアの挙動は標準化されていた方が好ましい。
そうすると、UIデザインというレイヤーでは差別化が難しくなるが、その先には何があるのか。
あらためて登場するのが、ブランドや世界観といったキーワードになる。
分かりやすいところだと、配色やフォント、アニメーション、あるいは魅力的なキャラクター。
それらを統合的に活用することで、独自の世界観を構築し、ユーザーの情緒性に訴えかけることで差別化できる。
わたしも含めて、ユーザーは自身のことを合理的に判断すると思い込んでいるが、実際は情緒的な生き物だ。
ほんの少しの、可愛らしい、イケてるという心の揺れが、知らない内に判断に影響を及ぼす。
ブランドや世界観といった話は、既にインダストリアルデザインの領域で、昔から言われてきたことではあった。
しかし、Webサービス界隈も成熟化してきて、徐々に同じようなフェーズに来たのではないかと感じている。
ちなみに、いわゆるUIデザインが好きなデザイナーであれば、これからはVRやARといった領域が面白いだろう。
わたしも、どちらかといえば物事の構造的な部分や、人とシステムの関係性に興味を示すタイプのデザイナーだ。
VRやARはベストプラクティスが何もない状態で、どういう操作をさせれば良いのか、業界全体で模索している段階だ。
何も正解がないからこそ、これからの業界標準を、自らの手でデザインできる可能性を秘めている。
そんなわけで、デザインの中でも、自分はどのレイヤーの事象を考えるのが好きなのか。
言語化しておくと、業界の特徴や成熟度と照らし合わせて、やりたいことを選びやすくなるのかもしれない。
そんなことを思って書いたメモであった。