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デザイン、システム開発、ライフハックについてゆるく書きます

詰まる所、UIデザインとは何なのか

UIデザインとは何なのか。このブログでは、以前から定期的に取り上げてきた問いである。

これまでと状況が違っているのは、デザイナーの道を歩んできたところから、バックエンドエンジニアを1年間やってみた、という点であろう。

コードを書くことがメインになったから、UIデザインのスキルが衰えたかというと、そうは思わない。

むしろ、ソフトウェア開発の知識が増えて、かえってUIデザインへの解像度が上がり、より深い言語化ができるようになった。

今回は、表題のとおり「詰まる所、UIデザインとは何なのか」を、思考の整理として書き留めておきたい。

UIデザインとは何か

一言で表すと「人とシステム*1をつなぐ行為」である。この定義に関しては、長年の間変わっていない。

Userという言葉は、ITの文脈では、システムの利用者を指す。

Interfaceという言葉には、inter(内面)とface(外面)という対極にある単語が含まれており、境界という意味合いを持つ。

この2つの言葉を合わせた User Interface とは、人とシステムの境界を表しており、UIデザインはその境界の設計に他ならない。

ちなみに、User という言葉を抜いて Interface Design とした場合、広義な意味合いとなり、例えば A と B のインタフェースデザインという使い方ができる。

どうやってUIデザインするか

先に述べた定義と照らし合わせると、以下の要素に分解することができる。

  • 人について知る
  • システムについて知る
  • 人とシステムの対話方式を知る

つまり「人とシステムをつなぐ行為」なのであれば、人とシステムという2つの登場人物の特性と、それらを結びつける方法を理解すればよい。

人について知る

昨今では、UXデザインというパッケージの中で、ユーザーインタビューやペルソナ等、人について知るための方法が普及してきた。

人とシステムをつなぐためには、当たり前だが、その人について理解していなければ遂行は難しい。

また人といっても、動物としての人から、社会に属する人、個としての人など、複数のレイヤーに分けることができる。

これらは、脳科学、社会学、認知心理学といった複数の分野にまたがっているが、UIデザインにも重要な示唆を与えてくれる。

システムについて知る

先に述べたように、人についての理解は随分と重要視されるようになった。

しかし、UIデザインを「人とシステムをつなぐ行為」とした場合、システムは片翼を担っているにも関わらず、それは別の分野の話とみなされることが多い。

ソフトウェアエンジニアが、高度な専門性を持った職業として確立されている中で、オーソドックスなキャリアを歩んできたデザイナーは、システムについて体型的に学ぶ機会を持たない。これは業界や教育の構造がもたらした結果と見ることもできる。

システムというと、定期的に「デザイナーもコードを書けるべきか」というトピックが話題に上がるが、それも表面的な議論でしかない。

要するに、デザインしようとしている対象が、どのような仕組みで成り立っているのか。それをどこまで知っておくべきなのか、という話なのだ。

例えるなら、グラフィックデザイナーが、印刷の仕組みや紙の特性について、全く知らなくてもいいのか?という話と本質的には同じである。

それにも関わらず、「コードを書けるべきか」という抽象度が低く、かつ個別事象として扱われやすいのは、システムが物理的な実体を持たずイメージしづらい、というリテラシーの問題が関わっているかのように思える。

システムについて知ることは、UIデザインを知ることと完全に地続きである。

人とシステムの対話方式を知る

UIデザインを学ぶために、SketchやFigmaの使い方を学ぼう。配色やタイポグラフィについて学ぼう。

これらはアプローチとして間違っていないが、それは人とシステムの対話方式として、今はたまたまGUIが広く普及しているからに他ならない。

GUIという形式で、視覚要素が大きなウェイトを占めるからこそ、配色やタイポグラフィ、レイアウトといったグラフィックデザインのスキルを活用できる。

そして、それらを表現する手段として、理にかなっているのがSketchやFigmaである。こうして全体感から捉え直すと、自分が何のために、何を学んでいるのかが分かりやすいと思う。

もしもVUI(Siri等、声を用いた対話方式)がメインになれば、SketchやFigmaはあまり役に立たなくなる。

スマートフォンが廃れ、ARグラスが取って変われば、その場合も同様だ。現在のSketchやFigmaのような、平面的なデザインツールでは、3次元空間の体験をデザインすることは難しい。

だからこそ、UIデザインを学ぶ = Sketchの使い方を学ぶ、という表面的な理解だけでは、本質を見失ってしまうのだ。

ちなみに、SFやファンタジーといった創作物に触れることは、現状に囚われず、人とシステムの対話方式について多くのインスピレーションを与えてくれるので、おすすめしたい。

まとめ

昨今では、UI/UXという表記で、UIデザインを抽象度の低い画面の意匠設計と捉えているようなケースをよく見かけるようになった。

しかし、UIデザインはUXデザインの下位概念でもなければ、包含関係にもない。

こうして思考の整理をすると、あらためて、UIデザインが非常に奥深く広い概念であることが再確認できた。

人とシステムの関係性に着目するというのは、私にとって面白く、探求しがいのある分野である。

今後も、何か認識にアップデートがあれば、その度にこうして言語化してみたいと思う。

*1:ここでは、特にコンピュータシステムを指す