最近わたしの中で、空前のしろくま本ブームが到来しています。
しろくま本というのは「情報アーキテクチャ」という書籍の愛称なのですが、この本がとにかく面白い。
Webサービスやアプリ開発に携わる方であれば、ナビゲーションやラベリングの設計に悩んだことが一度はあるはずです。
しかし、しろくま本では、こうした抽象度の高い問題を解決するためのフレームワークや設計手法が豊富に解説されているのです。
…と、ここまでしろくま本の宣伝のような形になってしまいましたが、そもそも「情報アーキテクチャ」が何なのか、いまいちピンときていない方も多いのではないでしょうか。
というわけで、今回は情報アーキテクチャとは何なのか。その役割や仕事について、わたしなりに解説してみたいと思います。
情報アーキテクチャの役割とは?
まず、情報アーキテクチャの役割について。
それは、一言で表すならば「ユーザーの快適な情報探索行動を設計すること」と言えます。
どんなWebサービスやアプリでも、表面的なスタイルは異なっていても情報構造そのものは非常に似通っています。
そこで情報アーキテクチャの実践者であるインフォメーション・アーキテクトは、対象のWebサービスやアプリが提供している情報を抽象化し、ユーザーにどんな情報探索行動を取ってほしいのかを加味して情報アーキテクチャ(情報構造)へと落とし込むのです。
このように、情報アーキテクチャの役割は非常に抽象的なレイヤーの事柄を扱うため、その重要性はUIデザイナーほど認識されていません。
しかし、情報アーキテクチャをまったく考慮しないWebサービスやアプリは、次のような問題を抱えがちです。
- 場当たり的に機能やコンテンツが追加されナビゲーションが機能しない
- トップページがバナーだらけとなり伝えたい情報が伝わらない
- サービス上で情報が整理されておらず必要な操作が分かりづらくなる
こうした問題を解決するためには、優れた情報アーキテクチャが必要となるのです。
情報アーキテクチャの仕事について
では、Webサービスやアプリの開発現場において、情報アーキテクチャ(インフォメーション・アーキテクト)はどのような仕事を行うのでしょうか。
その内容は、大きく分けて次の3つになります。
1.ナビゲーション設計
Webサービスやアプリのナビゲーション設計を行います。
トップページにどんな情報を記載するのか、グローバルナビゲーションにはどのようなメニューを配置するのか。
こうした全てのナビゲーション設計を行います。
サービスの初期であれば、例えばiPhoneアプリの場合、サービスの提供する機能やユーザーのニーズを汲み取ってタブバーにどのように配置するのかを考えます。
時には運営側が見せたいコンテンツと、ユーザー側のニーズにギャップがある場合もあるため、ユーザー中心設計の思想の元、社内のコンテキストを考慮しながら設計していく柔軟性が求められます。
2.ラベリング設計
Webサービスやアプリにおいて、ほとんどの機能やコンテンツには名前が付いています。
そうしたラベリング(命名)を行うのも情報アーキテクチャの仕事です。
たかが名前と思うかもしれませんが、適切なラベリングを行うことで、ユーザーに快適な情報探索行動を取らせることができるのです。
もし、場当たり的な伝わりづらいラベリングを行えば、ユーザーにその意味を正しく伝えられないことで大きな機会喪失の原因にもなりかねません。
3.情報構造のチューニング
Webサービスやアプリは、当然ながらサービスとして成長していくものです。
サービスとして成長する過程で、ユーザーのニーズに応えるべく機能が実装されたり、新しいコンテンツが追加されるのはよくあることです。
そうした中で問題になるのは、元々の情報アーキテクチャが、新しい機能やコンテンツに対応しておらず矛盾を孕むということです。
例えばポータルサイトでも、「おすすめ」というレコメンデーション系のコンテンツが成長に伴って増えることで、それらの差異が分からなくなることがよくあります。
例えば、Yahoo!のトップページを見てみても、
- あなたにおすすめ
- おすすめ
- おすすめセレクション
というように、それぞれの言葉が明確に何を意味しているのかが分かりづらくなっています。
このように、情報アーキテクチャはサービスの成長に伴って都度ナビゲーションやラベリングを見直し、拡張性を持った情報アーキテクチャを維持するためにチューニングを行う必要があるのです。
おわりに
情報アーキテクチャは、デザイナーやエンジニアよりも、さらに目に見えにくい抽象的な事柄を扱うことになります。
そのため「情報アーキテクチャ?ナビゲーションの設計をしたり、ワイヤーフレームを書く人のことでしょう?」と表面的な理解をされがちです。
しかし、ユーザーにサービスの持つ価値を最大限に届けるためには、情報アーキテクチャの能力が必要と言えるでしょう。
もしインフォメーション・アーキテクトという職種そのものに興味が持てなくても、デザイナーやエンジニアなどサービス開発に携わる人間であれば、ぜひとも下記のしろくま本(情報アーキテクチャ)の一読をおすすめします。

情報アーキテクチャ 第4版 ―見つけやすく理解しやすい情報設計
- 作者: Louis Rosenfeld,Peter Morville,Jorge Arango,篠原稔和,岡真由美
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2016/11/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る