早いもので、去年独立してから1年間が経った。今のところ何とかやれているが、将来の保証は何もない。
とはいえ、この1年間だけでも得られた学びは多かったと思い、現時点でそれを書き記しておこうと思った。
経営者としての危機感を持つ
個人でやるか、チームでやるかの違いだけで、フリーランスも立派な経営者である。
そういう意味で、フリーランスを会社員の延長線で捉えている人が、世の中に多いと感じている。そんな人であっても、自らの仕事を事業と捉え直すと、様々な示唆を得られる。
例えば、わたしのような、クライアントワークを営んでいる場合。当たり前だが、わたしが体を壊せば事業は続行不可能となる。また、昨今のAIの進化によって、現状のようなデザインワークは必要がなくなるかもしれない。
つまり、経営としては脆弱と言わざるを得ないだろう。だからこそ、ベンチャー企業のような思考が必要になる。クライアントワークで種銭を作り、いかに新規事業を生み出せるかが鍵になるだろう。
不確実性の高い世の中ではあるが、それでも5年後、10年後を見据えて、経営者としての危機感を持ち行動するのが重要だ。
ポートフォリオを分散する
前述の、事業という意味でのポートフォリオの分散もそうだが、他にも様々な点で分散しておくことが望ましい。
例えば、取引先もそうだ。特にクライアントワークの場合、1社としか契約していなければ、その1社との契約が切れた途端に売上はゼロになってしまう。
企業側のニーズとしては、業績が好調な時はフルコミット人材を求めるが、風向きが変わればすぐに契約を切られる。
会社員と異なり、無期限雇用という前提がないため、景気が悪くなればフリーランスは真っ先に削減の対象になるからだ。
とはいえ、フリーランスの中には、ひとつの現場でじっくり取り組みたいというタイプもいるだろう。しかし、異なる現場を同時に経験することで経験を相対化でき、深い学びを得ることもできる。
例えば、ベンチャー企業ではとにかく人が足りないので、契約形態を問わずコアな業務に関われる確率も高い。しかし、新しく得られる学びはそれほど多くない。
一方で大企業であれば、既に組織が出来上がっており裁量は少ないが、蓄積されたノウハウから得られる学びは非常に多い。
よって、片方の現場から得た学びを、もう片方の現場で実践するといった形で、いいこと取りをすることも可能だ。
人の縁を大切にする
企業とは、一見するとシステマチックに運営されているようだが、中身は人の集合体だ。だから、必ずしも経済合理性だけで全てが決まるわけではない。
人の縁を大切にすることで、次の仕事に繋がったり、あるいは今の仕事が円滑になることを学んだ。
スキルがあるのはもちろんだが、一緒に働いていて楽しいか、人として気が合うかどうかは重要だ。
フリーランスになってから、意識して飲み会にもなるべく参加するようになった。決して打算だけで参加しているわけではないが、それでもちょっとした交流が、何かに繋がることは多い。
また、人の縁からチャンスがもたらされたとしても、それを掴み取るためには日頃からの準備が必要だ。
自分の人柄やスキルを紹介するために、ポートフォリオを常に最新化しておいたり、SNSやブログでの情報発信を欠かさないようにしたい。この点は、わたしもまだまだできていない点なので、今後は強化していきたいと思う。
クライアントワークをやっていると、ついスキルばかりに着目しがちだが、営業スキルも同じくらい大切だ。
仮に報酬額を上げたいと思った時、自分で営業できずエージェントに頼っていた場合、取引先から見れば、エージェントへの報酬も含めて、わたしへの人件費なのだ。それを忘れてはならない。
やりたい仕事ができるかは自分次第
フリーランスになると、断片的な仕事ばかりで、コア業務に関われない。あるいは、組織作りやマネジメントに関われない。そう言って、会社員に戻るケースをよく耳にする。
しかし、これは自分への戒めも込めて厳しい言い方をすれば、それは自身の実力のなさをフリーランスの構造へと問題をすげ替えているだけだ。
例えば、大御所デザイナーと一緒に仕事をする会社があったとして、ちょっとしたタスクをわざわざ依頼するだろうか。
つまり、やりたい仕事ができていないのだとすれば、それは自分の実力がそのまま反映されているだけなのである。
会社員の時であれば、上司に相談すれば、望む仕事にチャレンジする機会を取り計ってもらえたかもしれない。しかし、フリーランスはその機会を自ら作り出さなければならないし、それが独立するということなのだ。
もし、やりたいのにやれない仕事があるのだとしたら、どうすればその仕事をできるようになるのか、それを自分の頭で考えることが重要だ。
休むのも立派な仕事
意識して体を休めること。そして、家の外に出ていくこと。フリーランスになってから、その重要性をより実感するようになった。
特にフルリモートという性質上、いかにして偶然の要素を盛り込めるかどうかが、ブレイクスルーを得るための鍵になる。
旅行でも、新しいアクティビティでも、趣味でも何でも良い。
仕事から物理的に離れてそれらに触れることで、不思議なことに、本業での漠然とした悩みに結論が出ることもあるのだ。