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デザイン、システム開発、ライフハックについてゆるく書きます

フリーランスの狭義的な事業ポートフォリオ

フリーランスになって半年経った。ありがたいことに、今のところ食べることができている。たかが半年で何が分かるのかと思いつつ、最近考えていることがあって、それはフリーランスでも企業のように事業ポートフォリオを意識する重要性である。

フリーランスとして、最も危険な状態とは現状維持である。これは企業と全く同じであり、そもそも1人というだけで、やっていることは事業なのだから当たり前の話である。経営している会社が、あるいは従業員として働いている会社が、何の進化もせず現状に甘んじていれば、やがては衰退の一途を辿るだけだ。

生き残るためには、常に変化に対応し、主体的に新しい一手を打ち続けなければならない。そんなわけで、フリーランスにも事業ポートフォリオが必要なのだ。しかし、わたしはプログラマーだ。清掃員だ。大工の親方だ。企業のように複数の事業を行う余裕はないし、今やっている仕事を突き詰めたい。そういう場合はどうするのか。

もちろん、社会構造的な外圧によって今の仕事を無くすリスクは常にあるため、本業以外の収入源を持っておくことに越したことはない。そのために、わたしも小さな不動産投資を始めてみた。しかし、ここで言いたいのは副業をしましょうという話ではなく、その本業の中で事業ポートフォリオを構築するように考えてみることである。

わたしの場合、UIデザイナーとしてWebやモバイルアプリのデザインを請け負っているが、その中でのどのように仕事を組み合わせて実績を育てるべきか。つまり、狭義的な事業ポートフォリオである。例えば、わたしは現在2社と契約させていただいていて、当初は次のような状況だった。

1社目は、多くの人に知られた上場企業であり、有名なtoC向けのスマートフォンアプリを提供していた。一方で、直近のわたしはtoB向けの業務系アプリケーションに関わることが多く、スマートフォンアプリの制作実績は乏しかった。

2社目は、従業員数はまだ50人にも満たないが、デザイン組織の内製化を検討しており、雇用形態に関係なく組織作りを推進、サポートしてくれる人材を探していた。一方で、直近のわたしはマネージャー経験はあったものの、ゼロからデザイン組織を構築した経験は持っていなかった。

よって、上記の仕事で結果を出すことができれば、わたしは「有名なスマートフォンアプリでのグロース」と「ゼロからのデザイン組織構築」という2つの新しい実績を手に入れられる。そして、この実績を元にすれば、また次の仕事を獲得できる可能性が増えると考えた。

ところが、もしも経験豊富(とまでは言えないが)なtoBの業務アプリケーションのデザインばかり引き受けていれば、新しいスキルを伸ばす機会も失われてしまうし、ジリ貧になることは避けられない。

このように、まだ持っていない経験を得られるだろうか、という視点が重要になる。もちろん、引き受けたからには全力で結果を出し、契約していただいた企業の成功に貢献しなければならない。何よりもそれがまず先だ。その後、副次的に実績が付いてくる。

本来であれば、フリーランスと契約する企業は、その業務について既に豊富な実績を持つ者と契約するはずだ。しかし、幸か不幸か、どんな業界もおおよそ人材不足である。業界のトッププレイヤーは常に引っ張りだこだし、あるいは彼ら、彼女らに支払える十分な予算を用意できない場合もある。そもそも、企業は人の集まりなのだから、常に経済合理性だけで仕事は行われない。よって、工夫次第では、実績の乏しい仕事に挑戦するチャンスは掴み取れる。

短期的には収益に結びつかなかったとしても、リスクを取ることになろうと、事業ポートフォリオの花形に縋りついていてはいけない。常に金のなる木(フリーランスの場合、その木はたいてい自分自身だ)を探し、育てていかなければ、いずれは腐っていってしまうだけだ。そして、この考え方はフリーランスだけでなく、会社員にも使えるはずだと思っている。まずは自分のスキルを事業と見立てて、棚卸しするところから始めてみてはいかがだろうか。