会議や仕事用のメモに、ちょっと気の利いたイラストでも描けるようになれたらいいのにな…と思ったことはないだろうか?
わたしもそう思って、今までに何冊かイラストのハウツー本を買ってみたことがあるのだが、何かが違う。
わたしが描けるようになりたかったイラストは、アート作品として完結したものではなく、コミュニケーションのためのツールとして機能するものというイメージがあった。
例えば仕事で打ち合わせをする際、ちょっとしたイラストを描いて説明するとコミュニケーションがスムーズに運ぶことがある。
しかし、そうしたコミュニケーションを目的としたイラストの技本を解説した本というものになかなか出会えない。
どこかに、参考になる本はないのだろうか?
…そんなことを考えていた折、最近やっとヒントとなる本に出会うことができた。
それが「Graphic Recorder」という本だ。

Graphic Recorder ―議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書
- 作者: 清水淳子
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2017/01/27
- メディア: 単行本
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Graphic Recorderを読むメリット
この本で紹介されている「グラフィックレコーディング」という概念は、自分にとってまさにドンピシャな内容だった。
グラフィックレコーディングというのは、「様々な対話や議論の内容をグラフィックによって可視化すること」であり、いわゆる作品としてのイラストではなく、コミュニケーションのツールとして使える議論の可視化の方法が紹介されている。
グラフィックレコーディングって何なの?というそもそも論的なことから具体的な活用方法まで、グラフィックレコーディングの全体像がサラッと掴めるような構成になっているので、初心者にはおすすめだ。
特に次のようなテクニックは、明日からさっそく仕事で活かすことができるだろう。
- 絵ではなく、物事を記号化してアイコンとして描く
- 時間や位置、量といった情報をどうやって描くか
- 話題を分かりやすく整理する線や矢印の描き方
なぜ議論を可視化することが役に立つのか?
グラフィックレコーディングについて、「議論の可視化」というと難しく聞こえるかもしれないが、要するに「絵で分かりやすく伝えるツール」だと思えば分かりやすい。
では「なぜ議論を可視化することが役に立つのか」について確認したい。
それはやはり「参加した人全員が同じ認識を持つことができ、議論をスムーズに進めることができるから」であろう。
例えば、わたしが働いているようなIT企業の開発の現場でも、言語ベースのやり取りだと認識がずれて、後から手戻りが発生することは多い。
前職では、エンジニアとインタフェースについての仕様を話し合っていたとき、お互い同じ箇所について話し合っていたつもりだったのに、実はまったく別の箇所について話をしていたことが後から分かった…ということもあった。
またIT企業でなくとも、会議が盛り上がりその場の流れで決まってしまったようなことについても、後から思い返すと「どういう経緯でこうなったんだ?」と見失ってしまうことも多いはずだ。
こうしたときに、グラフィックレコーディングによってイラストをベースにした記録もつけていれば、「なぜこういう話になったのか」という文脈まで一目で思い返すことができるようになる。
おわりに
グラフィックレコーディングは、一見すると簡単なイラストを組み合わせただけに見えるかもしれないが、実際にやろうとすると、かなり頭を使う作業だということが分かる。
人の会話は、本人たちが想像しているよりもずっと脈絡のない内容であることが多いし、そこから要点を抜き出して抽象化し、リアルタイムでイラストに落とし込むのは大変高度なスキルだと言えるだろう。
しかし、簡単なところから始めることはできるし、絵を使ってコミュニケーションすることを普段から心がけるだけでも、普段の職場で役立つシーンは無数にあるはずだ。
興味のある方は、ぜひ一度読んでみてはいかがだろうか。