Webデザインを学ぼうとした時、PhotoshopやHTMLなどの「デザインの手段」についてのカリキュラムは豊富ですが、「デザインの思考」について学べる方法が少ないことに気が付きます。
デザインは本来、意匠計画・設計という意味なので、「作る」ことと同じくらい、「考える」ことも重要であり、その2つの力を備えて初めて一人前のデザイナーと言えるのではないでしょうか。
PhotoshopやHTMLといった技術そのものは、あくまでオペレーション(作業)の問題なので、デザインの勉強とは言えません。
それらの技術を極めても、AdobeオペレーターやHTMLコーダーになることはできますが、デザイナーとしての能力を身につけることはできないと考えます。
では、一人前のデザイナーとは何かと考えたときに、その例えとして最もイメージしやすいのがベテランの大工さんです。
- 大工さんが極めているのはノミやカンナだけではない
- 手段だけを学んでいてはデザインの勉強にはならない
- デザインの構成要素を知ること
- 構成学について学ぶ
- Webデザインの構成要素は何か
- 本からインプットすることも大切
大工さんが極めているのはノミやカンナだけではない
ベテランの大工さんは、長い修行期間を得て、「作る」力はもちろん身についていますが、加えて「考える」力も身についています。
それは、建築物を作るために必要な知識や、それを応用する思考力のことであり、その知識が無ければ、実際に建築物をいちから作りあげることはできません。
いくら道具(ノミやカンナ)を極めても、それだけでは一人前の大工さんとは呼べないのです。
もし彼が道具の使い方しか学ばなければ、彼はあくまでノコギリやカンナの名人であり、一人前の大工さんとは言えないでしょう。
道具だけを極めている人は、上司から受けた指示を完璧にこなすことはできますが、自分で創造力を発揮し、設計することはできません。
同じことが、Webデザイナーにも言えると思います。
手段だけを学んでいてはデザインの勉強にはならない
上記のことを考えると、様々なポータルサイトの「Webデザイン」カテゴリでもてはやされる記事は、だいたいが手段に関する記事でしかないことにお気づきでしょうか。
例えば、「コピペで簡単!CSSでオシャレな見出しを一瞬で作る方法」といった記事の場合、それは、大工さんの業界で言うならば「あっという間にできる!釘を簡単に打つ方法」や「誰でもカンナで木を0.2mm削れるようになるコツ」といったものになるでしょう。
もちろん、そういった記事は「作る」力を身につけるために大変価値のある情報なのですが、デザインについて、表面的な「作る」ことだけしか見えていなければ、もっと本質的な「考える」力を身につけることにはつながりません。
デザインの構成要素を知ること
では、デザインについて「考える」力を身につけるにはどうしたらいいのでしょうか。
その方法とは、「デザインの構成要素」を知り、まずはその構成要素について個別に学ぶことです。
PhotoshopやIllustratorなどのオペレーションだけを学ぶのではなく、そもそも「良いデザインを構成する要素とは何か」を明らかにするのです。
この部分は本来「センス」という曖昧な言葉で濁されることが多いのですが、実は、人がどんなものを見て「美しい」「かっこいい」と思うのかは、既に解き明かされ、体系的にまとめられています。
それが、「構成学」というものです。
構成学について学ぶ
筑波大学名誉教授の三井秀樹先生は、構成学について、著書『美の構成学』の中で以下のように述べられています。
構成学を一言で言えば、造形に共通する形体・色彩・材料に関するそれぞれの特性を明らかにするとともに造形とのかかわりを掘り下げる研究領域である。(「美の構成学」三井秀樹著 P60より引用)
Webサイトやアプリにおいても、デザインについて全く知らない人が見れば、ただの一枚のビジュアルにしか見えないことがよくあります。
しかし、実際には様々な要素を緻密に計算し組み合わせることによって、美しいビジュアルを作り出しているのです。
よって、デザインを学ぶ際にも、まず構成要素について本などで体系的に学んでからツールの学習に取り組むことで、デザインを「考える」力を身につけることができます。
Webデザインの構成要素は何か
それでは、Webデザインの構成要素とは、具体的にどんなものがあるのでしょうか。
代表的な構成要素としては、以下の4つが挙げられます。
レイアウト
レイアウトは、写真や文章といった要素をどのように構成し、配置するかを考えることです。
使われている写真や文章は同じでも、どのように配置するか、どのように強弱をつけるのかによって、伝わり方を自由自在に操ることができる、デザインにおける重要な構成要素と言えます。
タイポグラフィ
文字についての扱いを考えるのが、タイポグラフィです。デザインによって、適切な書体の選び方を行うことで、デザインに説得力を持たせたり、親しみをもたせたりすることができます。
トランジション
最近のWebサイトやアプリケーションでは特に目立つのが、このトランジション(動き)ではないでしょうか。
適切なタイミングでトランジションを入れることで、ユーザーを特定のアクションへ導くことができ、情報を正しく伝えることができるようになります。
カラーリング
色の見せ方や組み合わせによって、デザイン全体の雰囲気を決定づける重要な構成要素が、このカラーリングです。
色は、見る人に対して強烈な印象を残すことができます。
本からインプットすることも大切
このように、デザインを学ぶ上では、「作る」ことと同じくらい「考える」ことが重要であり、その重要性は「大工さん」をイメージすることで分かりやすくなったのではないでしょうか。
デザインの「考える」力を身につけることについては、有益な情報を発信しているWebサイトもたくさんあるのですが、それでもまだ書籍からのインプットが最も無駄が無く、正しい情報をインプットすることができます。
普段Webでしか情報収集していないという方も、たまには本からもインプットする機会を持ってみてはいかがでしょうか。