「シンプルなUI」というワードを耳にする機会は多いですが、大抵の場合「シンプルであること」は肯定的なニュアンスで捉えられています。
なぜ、UIデザインにおいて「シンプル」は良いこととされているのでしょうか。
ヒックの法則について
その理由の1つには、「ヒックの法則」を根拠として挙げることができます。
ヒックの法則とは、「ユーザーの意思決定にかかる時間は、選択の際のエントロピー(情報)量に比例する」という法則です。
つまり、ボタンなどの操作部を増やし過ぎると、いっけん便利に思えてもユーザーを迷わせる結果となってしまうのです。
逆に、UIをシンプルにすることとでユーザーの意思決定にかかる時間を短縮すれば、「すぐに使えて分かりやすい」と感じてもらうことができます。
また、そのようにしてユーザーの意思決定を遅らせないことが重要なのは「注目を途切れさせないため」でもあるのです。
モバイルアプリはシンプルな方が使ってもらいやすい
例えば、あなたがスマートフォンで何らかのアプリをインストールしたとします。
もし、最初のあたりでつまづいてしまったら、あなたは根気よく操作を続けるでしょうか?
多くの人は、その地点で使うのをやめてしまいます。
特にゲームなど娯楽系のアプリにおいて顕著な反応であり、多くのモバイルアプリは、ユーザーの注目(アテンション)の奪い合いであるため、最初につまづかせてはいけません。
そのために、UIはなるべくシンプルである必要があります。
とりあえずシンプルにしておけば正解なのか?
一方、世の中のUI全てがシンプルである方が良いのかというと、そうとも限りません。
例えば、テレビのリモコンを思い浮かべてください。
もしこれらのUIがシンプルではなかったとしたら、あなたは使うのをやめてしまいますか?
この場合は、説明書を読んだりして学習コストを払ってでも使おうとします。(それが使えなければ困りますからね)
そして、そういったUIは慣れるまでは難しく感じるものの、一度操作を覚えてしまえば快適に使うことができます。
先ほど挙げたテレビのリモコンなどはまさにその例に当てはまりますね。
一見シンプルでなくとも学習すれば最高のUIとなる
一方、もしテレビのリモコンがAppleのリモコンのようにシンプルだったらどうでしょうか。
いっけん、コンテキストに沿ってナビゲーションしてくれるために使いやすいように思えるかもしれません。
しかし、テレビに慣れてしまったユーザーからすると、すぐにチャンネル番号を押して目的のコンテンツにたどり着ける、「ボタンだらけ」の馴染みのリモコンの方が良いと感じます。
シンプルをデザインすることは難しい
このように、UIデザインにおいてはシンプルという選択肢も、「誰に向けたものなのか」を意識して行う必要があります。
学習コストを課してもユーザーに使ってもらえる見込みがあるのなら、多少複雑になったとしても、各機能へのアクセス性を重視するのも良いかもしれません。
一方、幅広く初心者に使ってもらいたい製品のUIの場合、シンプルにした方が良いときもあるでしょう。
シンプルの意味は「簡単」ですが、シンプルをデザインするのは実は難しいのです。

インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針
- 作者:Susan Weinschenk
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2012/07/14
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