デザイン理論の本は役に立たない?
以前とあるデザイナーの先輩に「俺こういう本嫌いなんだよね。現場では絶対違うでしょ。」と言われたことがある。
「こういう本」とは、わたしがその時たまたまデスクに置いていた、いわゆる「デザイン理論の本」であった。
その先輩は、デザインの専門学校を卒業後、 激務な制作会社など現場からの叩き上げで、ひたすらOJTでデザインを教わってきたような人だ。
そして、デザイン理論などの本に書いてあるような事は、実際の現場では役に立たないと考えるような方だった。
わたしとは1年間くらいの付き合いしかなかったものの、デザインに関する事はいつも根気よく教えてくださり、今でもすごく感謝している。
ただ感謝と同時に、最後まで「自分とは考え方が違うな…」という思いは消えなかった。
なぜデザイン理論の本は役に立たないのか
彼の言う事も分かる部分はあった。
おそらく彼の言いたかった事は、そういった理論系の本に書かれている事例をそのまま実際の案件で実践しても、良いデザインにはならないという意味だと思う。
その点に関してはわたしも同意見だ。
しかし、それはあくまで「そのまま本の通りに実践した場合」ではないかとわたしは思う。
参考にしたいシステム開発のデザインパターン事例
本で紹介されている原理原則や理論は、事例をそのまま使おうとしても、うまく活用することはできない。
あくまで、その根本の考え方や思想を役立てることで有意義に扱うことができるのだ。
例えば、プログラミングにおいても「デザインパターン」というものが存在する。
デザインパターンとは、直訳すると設計の型のことである。
実際の意味としては、プログラム設計時によくぶち当たる問題と、それに対する解決策を体系的に整理して、誰でも再利用できるようにまとめたものだ。
デザインパターンには、「こういうシステムを作りたいときは、こういう設計の型を用いるとうまくいくよ!」という先人たちがまとめた解法が載っている。
このデザインパターンも、その中で挙げられている事例を、そのままその人が仕事で携わっている案件に用いたところで、うまくいくとは限らない
デザインパターンはあくまで「型」であり、実際の案件はいろいろな事情や仕様が絡んでくるので、型をそのまま当て込んでもそれで万事うまくいくわけではないのだ。
ただし、設計を進めていく上で「指標」とすることはできる。
「こういうものを作りたい」という時に、それをうまく実現した先人たちによる設計の原理や思想を知っていれば、白紙の状態から進めるよりも、はるかにスムーズに事を運ぶことができるのだ。
デザイン理論はそのまま使えないが「指標」になる
デザイン理論の本においても同じことが言えるとわたしは思う。
そこに載っているレイアウトの王道パターンであるとか、認知心理学の原理が適用されたUIのパターンをそのまま案件に持ち込んでも、それだけでは完成しない。
しかし、作るうえで指標にすることはできる。
だからこそ、わたしは理論や本質を解いたデザインの本が好きだし、こういった本は積極的にどんどん読んで学ぶべきだと思っている。
さて、みなさんはどうお考えだろう。

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