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Webサービスの会社で働くデザイナーが、デザインやライフハックについてゆるく書き連ねるブログです。

UXとは、どこからどこまでを指すのか。

あなたは、UXという言葉をどう捉えていますか?

最近、Webサービスやアプリ開発の現場でしきりに用いられている「UX」という言葉ですが、個人的にはとても幅を持った言葉として使われている印象を持っています。

例えば、企業によってはプロトタイピングやカスタマージャーニーマップなど、手法的なアプローチのことを指していることもあれば、ユーザーが自社サービスと出会ってファンになってくれるまでの流れのことを指している場合もあります。

いったい、UXとはどこからどこまでを指すのでしょうか。

今回は、わたしがこれまで思っていたUXの範囲と、現状でそれがどのようにアップデートされているのかについてお話したいと思います。

わたしの考えていたUXの範囲

UXという言葉を直訳すると、ユーザー体験となります。

しかし、これではあまりにもフワッとしている印象でした。

そのため、わたしは便宜的にUXの範囲について自分の中での考えを決めておくことにしました。

それは、ユーザー体験の流れを以下の4つで区切り、その全体をUXとするというものです。

  1. 集客(CM、ポスター、SNS、ブログ、メルマガ、DM)
  2. 教育(ブログ、メルマガ)
  3. 販売(自社製品・サービスへの成約)
  4. リピート(継続利用・ファン化)

わたしがこのように捉えた経緯として、2つのきっかけがありました。

1つ目は、当時の職場がダイレクト・レスポンス・マーケティングを活用して自社Webサービスを販売する戦略を取っており、その影響を受けていたからです。

ダイレクト・レスポンス・マーケティングとは、従来のCM等のマスメディアを使って多数の相手に広告を流すのではなく、顧客と直接やり取りをして1対1のような関係性を築きながら商品を販売していく手法のことです。

2つ目は、UXを直訳したユーザー体験という言葉を初めて聞いたときに想像したのが、経営戦略の教科書によく載っている「バリューチェーン」だったからです。

バリューチェーンとは、事業活動を分解して、どこに自社の強みや弱みがあるのかを分析し、事業戦略が有効なのか、あるいは改善点がないのかを探るためのものです。 

参考:グロービスMBA経営戦略

[新版]グロービスMBA経営戦略

[新版]グロービスMBA経営戦略

 

このように、マーケティング色の強い会社にいたからこそ、UXの解釈にも、マーケティングによく出て来るフレームワークなどに影響を受けたのでしょう。

UXについて、わたしはいったん上記のような解釈をしたわけですが、しばらくの間はそれを疑う機会はありませんでした。

上記の解釈であっても、いわゆる手法的な教義のUXではなく、ユーザーが自社製品・サービスを使っている以外の時間もカバーできており、ユーザー体験のおおむね全てのシーンを含められているような思えたからです。

例えば、ユーザーの自社製品・サービスとの最初の接点も「集客」に含まれますし、競合の中から自社製品・サービスを選ぶ過程も「教育」に含めることができるとそのときは解釈しました。

転職して気づいたUXについてのギャップ

しかし、最近になって「あれ、この解釈で本当に合っているのか?」と疑問に思うようになりました。

というのも、転職したことによって、あらためて自分以外のデザイナーとUXの定義について話し合う機会が増えたからです。

以前の会社では、デザイナーはわたし一人だけという状況でしたから、UXの定義について、他のデザイナーと認識をすり合わせる機会を持てずにいました。

そのため、初めて自分以外のデザイナーと話してみて、UXの範囲についても、その認識が人それぞれ異なっていたことを興味深く思いました。

はたして、UXの範囲とはどこからどこまでなのでしょうか…。

もう一度UXについて見直してみた

こうして、転職先でUXの範囲についての認識にギャップがあることに気がついたことがきっかけとなり、もう一度UXについて見直してみようと決心しました。

そこで、先週下記の本を買って読んでみました。

Web制作者のためのUXデザインをはじめる本 ユーザビリティ評価からカスタマージャーニーマップまで

Web制作者のためのUXデザインをはじめる本 ユーザビリティ評価からカスタマージャーニーマップまで

  • 作者: 玉飼真一,村上竜介,佐藤哲,太田文明,常盤晋作,株式会社アイ・エム・ジェイ
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2016/11/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本では、ユーザー調査やプロトタイピング、カスタマージャーニーマップなど、いわゆる手法としてのUXの解説が詳しくなされており、非常にわかりやすい内容になっています。

この本の中で紹介されていた「UX白書」についての記載が非常に面白いのですが、その中では、UXについて明確に「時間的拡がり」という時間の概念が持ち込まれています。

例えば、UX白書での切り口は、下記のような期間で分けられています。

  1. 利用前:予期的UX(次の新型iPhoneはこんな機能がつくらしい。)
  2. 利用中:一時的UX(使いやすくていい感じだ!でも定員さんの態度悪かったな。)
  3. 利用後:エピソード的UX(あ!他社のスマホ値段下がってる!そっち買えばよかったかも。)

このようにUX白書では、ユーザー体験に時間という概念を持ち込んだことによって、UXという言葉は製品・サービスを使っている間だけを指すものではないということが提唱されたのです。

わたしの考えていたUXに抜けていたところ

以上を踏まえて、わたしが最初に考えていたUXの範囲を振り返ると、いくつか抜けている部分があることに気が付きます。

まず、時間軸の概念が抜けているということ。

そして、ユーザーを取り巻く環境すべてが体験なのだということです。

当初のわたしの考え方だと、どちらかというと企業がユーザーに辿ってほしい導線をそのままUXとして当て込んでいるだけで、そこにはリアルなユーザーの実態は現れていません。

開発者側としては、こういう風に集客して、こうやって販売して…という思惑があるのですが、必ずしもユーザーがそのように行動してくれるとは限りません。

また、デザイナーの立場としては、いくら製品・サービスのUIやビジュアルデザインに磨きをかけたところで、製品以外の要素(カスタマーサポートや販売員の態度が悪かった等)の体験が悪ければ、ユーザーから見てUXは最悪になってしまうということを覚えておかなければなりません。

つまり、本当にUXを良くしたい、デザインしたいと考えるのであれば、狭義のデザインから離れてビジネス的な視点を持って提案できるような能力を身に着けなければならないのかもしれませんね。

おわりに

いかがでしたか?

わたしは転職をきっかけにUXの定義やその範囲について考え直すきっかけが持てたのですが、あなたも、友人や同僚と話してみたら、以外とギャップを感じて面白いかもしれません。

ぜひ、色々な人と議論してみてはいかがでしょうか。

また、あなたはUXの範囲についてどのように考えているのか、ぜひTwitterやブログで考えを書いてくださると嬉しいです。

それでは、これからも良いデザインライフを送りましょう。